■ 「お客様の声」作成担当者に聞く
-- まずはじめに、『お客様の声』を作成するようになった経緯についてお聞かせください。 2004年、アシストの強み再構築プロジェクトによって、会社目標に「『情報活用といえばアシスト』と言われるようになる」が掲げられたことが発端です。その後、「アシストが考える情報活用のあるべき姿」を体系化するメンバーが召集され、「情報活用のアシスト」ロゴを作成したり、情報活用実現のための「6つの鉄則」を掲載した小冊子や「情報活用ストラクチャーマップ」などを作りました。 しかし、これらのツールは、ともすれば概念的であったり、提供者本位と受け取られがちであったり、お客様に「情報活用=アシスト」を訴求するには多くの補足説明を必要とするものであったため、営業現場では活用しにくかったようでした。そこで実際に、アシストがお客様の「情報活用」を支援している実例を目に見える形で紹介するものがあれば良いのではないかということになったのです。こうして「情報活用のアシスト」のベストプラクティス集として、『お客様の声』を作ることにしました。 この冊子を通じて、情報活用をキーワードに、「こんな使い方をされている会社があります」、「こんな結果を出すことができます」ということを紹介し、読者であるお客様に、情報活用実践のヒントを提供したいと考えました。2005年のことです。
-- 「お客様のための啓蒙活動」について、もう少し具体的に説明していただけますか。 啓蒙活動や情報提供に対するアシストのスタンスは、『アシスト』誌の起源ともいえる『アシスト・メモ』に遡ります。1980年に『アシスト・メモ』を創刊した当時は、ワープロやパソコンが普及する前で手書きのニューズレターを社長自ら情報収集・執筆していました。アシストが販売する商品の宣伝をするのではなく、中立的な立場から、技術や業界動向を顧客に伝えることが目的でした。 実は、『アシスト・メモ』発刊のきっかけも、『お客様の声』と同様、お客様からの助言だったのです。当時、社長のトッテンが、アシスト創設時にお世話になった永妻寿氏の後輩を日本航空に尋ねた際、以下のように教わりました。 「我々は情報が欲しい。新聞や雑誌に書かれている情報は、みんなが同時に手にする。しかし、ビル・トッテンと会わなければ得られない情報があるならば、いつでも誰でも会ってくれる。だからそのお客様に役立つ情報を持っていきなさい」と。こうしてトッテンは「顧客を訪問するには、顧客にプラスになる『手土産』が必要」ということを学びました。 そして、その助言に従って、日本進出前のガートナーグループなどから情報を集め、日本の顧客向けに編集して『手土産』として提供するようになったのが起源です。 -- ガートナーグループというと、あの「ガートナーレポート」を発行している調査会社ですか。 はい。社長のトッテンが、ガートナーグループの設立準備中のギデオン・ガートナーを1979年に訪問し、日本は「アメリカのコンピュータ業界の影響が大きいので、アメリカの情報が欲しい。一方、日本の情報を提供できるので情報交換をしないか」と話を持ちかけ、ガートナーグループとのパイプができ、日本のユーザにガートナー情報を提供するようになったと聞いています。 その後、1984年になると、「情報管理者メモ」「役員メモ」とお客様の対象別にメモの内容が分けられ、ガートナーに限らず、英文の各種コンピュータ情報誌からコンテンツを選択し、翻訳して提供するようになりました。 そして、1986年になって、現在の『アシスト』誌のような形態となり、ユーザ訪問やセミナー講演録、お客様対談、アメリカ通信などを含む広報誌となったのです。また1988年5月からしばらくの間は、日本のパソコンソフトの価格破壊につながった、「スパーマイクロコンピュータ革命」シリーズのニューズレターも発行しています。 1980年の『アシスト・メモ』の創刊以降、それぞれの広報誌で目指してきたのは、中立的な立場での、お客様に有益な情報提供と新しいトレンドを示唆する啓蒙活動です。『お客様の声』は、「事例」に限定した内容ですが、もう1つの広報誌『アシスト』誌では、事例に限定せず、その時々で顧客に知らせたいITトレンド情報を中心にお届けしています。
-- それでは、『お客様の声』に話を戻します。『お客様の声』はどのような人に手に読んでもらいたいのでしょうか。特定の層を意識して作られているのですか。 『お客様の声』は営業担当者が日頃なかなかお会い できないエグゼクティブ層に読んでいただけるよう 意識して作りました。 経営上の意思決定を行うエグゼクティブ層にお渡しすることで、「こんな課題をアシストが解決してくれるのか」という印象付けを狙ったのです。 ただ実際にはエグゼクティブ層以外のお客様にも、新規訪問する際などに、アシストがどのような会社かを知ってもらうことに役立っている例もあるようです。これについては、後半でご紹介したいと思います。
-- 『お客様の声』を作るにあたり、特に注意 この事例を他の農協さんに持っていけば、きっと共感してくださると思います。また、他の業界の方でも、農協という意外なところでの情報活用事例にアシストが関わっていることに対して、興味を持っていただけるのではないかと思います。 -- 取材先は、どのような基準で決めているのでしょうか。
-- 読んで面白い記事にするために、工夫されている点はありますか。 まず、面白い情報を提供できる事例を探さなければなりません。例えば、お客様のビジネスモデルがユニークだったり、アシストの関わり方が独特だったりということを心がけています。 次に、取材することになったお客様の営業担当や技術担当などに、協力をお願いしています。 いくら良さそうな事例であっても、通り一遍の取材をしてしまうと、どこにでもあるような事例になってしまいがちです。素晴らしい事例作りのためには、そのお客様に携わったアシストの関係者しか知り得ない情報が欠かせません。その情報を共有するために、事前に関係者との綿密な作戦会議を行っています。この作戦会議で事例の善し悪しが決まると言っても過言ではありません。 関係者の皆さんの協力があってこそ、「面白いねぇ」と言っていただける事例ができるのです。 そして、社内の情報収集や意見の刷り合わせ以外にも、取材先のお客様のご協力がもちろん必要となってきます。
-- ところで、冊子のデザインが和風の凝ったものになっていますが、これはどのような理由からでしょうか。 これは3つの理由があります。 1つは社長のトッテンが日本の価値観を大切に考えているということです。最近は何でもアメリカ化、グローバル化という風潮がありますが、そうではなく、日本の良いところは良いところとして大切にしていきたいと考えています。トッテンは、日本の商習慣や伝統の中でビジネスを行ってきたからこそ、アシストがここまでビジネスを続けてこられたと思っています。その1つの現れがこのデザインです。 もう1つは、当初の配布ターゲット層であったエグゼクティブ層に受け入れていただける冊子にしたいという思いからです。そのため、文字を詰め込みすぎないで遊びとして余白を設けたり、日本の伝統色を基調にしたデザインにしたり、縦書きにしたりしています。ちなみに、デザインコンセプトの参考にしたのは、『CIO Magazine』です。 3つ目は高級感のあるデザインにすることで、冊子を大事に保管していただくことも期待しています。手にしたときはピンとこなくても、後に同じような問題に直面したときに参考にしていただければ、と思っています。 -- 他に工夫している点などありますか。 毎号、日本の伝統色や表紙デザインを取り入れているのですが、実は、裏表紙をめくったところに、こっそりと、その号の基調となっている色の説明があります。普通に見えるところに書くのではなく、わざわざ見えないところに伝統色の説明を入れています。これも奥ゆかしさという、いにしえより伝わる日本の文化を意識しています。 そして、お客様に渡すときに、「実はこんなところに、こんなことが書かれているんです」と裏表紙をめくりながら伝統色の話をしていただくと、「へぇ」と驚かれると思います。話のネタに困っているときやお客様の意識を引き寄せたいときなどに使えるかと思います。
-- 『お客様の声』をどのように使うと効果的でしょうか。 『お客様の声』は年3回、定期発行していますので、日頃なかなかお会いできないエグゼクティブ層に対して、最新のものをお届けすることを理由に、定期アポが取りやすくなると考えています。 実際、ある会社のエグゼクティブが、お客様の声の記事を読み、その取り組み内容に感化され、部下の方をその企業に訪問させた、というエピソードも残っています。「お客様の声」をきっかけとして、アシストが仲介役となり、お客様同士をお引き合わせすることにもつながったというわけです。 また、当初はエグゼクティブ層向けの配布を意識して作りましたが、社員からは、「製品ではなく、アシストそのものの強みを伝えられるので、アシストのことをあまりご存知でない新規顧客にも積極的に配布している」との報告を受けています。 例えば、新規に資料請求されたお客様を訪問する際に、会社案内だけを渡すのではなく、『お客様の声』を一緒に渡すことで、アシストがどのような立ち位置で振舞う会社なのかを、ユーザの声を通じてご理解いただき、アシストに対する信頼も高まり、その後の営業活動のプラスになったというものです。 他にも、1つの製品だけを購入いただいたお客様に対して『お客様の声』をお渡しすることで、本来なら相談がなければ、なかなか知っていただけない他分野でのアシストの支援活動を認知してもらうことで、その後の受注につながることもあります。 -- 確かに、お付き合い歴の短いお客様には売り込み臭さがしない『お客様の声』は有効かもしれませんね。
-- 最後に、今後の『お客様の声』作成に関する抱負をお聞かせください。 この冊子を通じて、お客様にアシストをもっと知っていただければと思います。 お客様にとって、単なる「パッケージソフトのアシスト、道具屋のアシスト」ではなく、「お客様の情報活用を支援するアシスト」になりたいと思っています。ここでいう「情報活用」とは、企業における情報システム全般を考えています。 アシストでは、「業務改善や利益追求といったビジネス課題の解決・改善に向けて、ある事実(データ)を、目的(意図)をもって捉えたときに、その事実は情報となり、その情報に基づき具体的なアクションを取ることが『情報活用』」だと捉えています。 よって、ビジネス・インテリジェンスやデータ・ウェアハウスといった分野だけを指すものではありません。情報システムに蓄積されたデータを業務において活用するという意味では、運用業務の標準化なども含まれますし、こういった情報活用を日々実現するための仕組み作りも含まれます。 『お客様の声』は、ソフトやサービスの提供とは違った形で、お客様の情報活用を支援することが目的です。そのためにもお客様のお役に立つ、面白い情報を継続して提供し続けることが重要だと思っています。継続はともするとマンネリ化しがちですが、『お客様の声』は毎回新しい発見ができるような、各社の「ならでは」を中心に情報を提供していきたいと思っています。 『お客様の声』は、社員の皆さんからの「これは面白そうだ」というお客様推薦を元に、取材先を検討しています。今後とも、ここぞというお客様事例があれば、是非推薦いただきたいと思います。 ※ 取材日時 2008年6月 ※ カスタマワイズ作成 |